ドイツ・欧州環境規制最新動向

II. 欧州(EU)の環境規制動向

セヴェソ事故30周年
欧州の環境に関する大きなイベントとして、2006年はセヴェソ事故の30周年であった。
事故はイタリア・ミラノ郊外のセヴェソという町の化学工場で起きた。殺菌剤の製造プロセスにおいて、暴走反応(反応による発熱が制御できなくなること)が起き、爆発したのである。この際、漏れ出したダイオキシンが周囲の環境を汚染し、住民、動植物に大きな被害を与えた。
この事故の法律的な帰結として、EUは2つのセヴェソ指令を出し、それが各国で国内法化され
て、欧州全体で化学プラントの安全性が向上した。
またイタリアにおいては、損害補償に関する法律が抜本改正された。
事故後30周年をきっかけとして、スイスで映画化(原題“Gambit”)されたが、これは4つのドキュメンタリー映画賞を受賞した秀作である。DVDがドイツ語、英語、フランス語、イタリア語で発売されており、日本からもインターネットで入手することができる。なおドイツでは、セヴ ェソ事故を扱ったドキュメンタリー小説も発刊されている。

EUの廃棄物政策

廃棄物政策ではEUは1975年の段階で既に、回避⇒活用⇒処分という優先順位を確立している(指令「75/442/EEC」)。それに基づく廃棄物政策を、包装、電池、自動車、廃電子機器の一連のリサイクル指令を出すことで実行している。

①包装リサイクル
包装に関する動きとしては、フランスでレジ袋に生分解性プラスチックの使用を義務づける法律を準備中であり、2010年にこの法律が施行される予定である。また同じくフランスで、ゴミ袋に植物性由来プラスチックの使用を義務づける法律も準備中である。

こういった生分解性プラスチックや植物由来プラスチックを、包装関係で法律により義務化するという動きはフランスだけに見られ、欧州の他の国で追随する動きは今のところ見られない。
例えばドイツにおいて、レジ袋に生分解性プラスチックの使用を義務化することは考えられない。
ドイツでは、プラスチック包装のリサイクルシステムが完備しており、生分解性プラスチックに変更する必要がそもそも存在しない。
フランスはプラスチック廃棄物のリサイクルが遅れているがために、生分解性プラスチックにすることに政策的意味がある。
このように国の内情により違いが大きくある。

②生ごみのリサイクル
(図6)はEUの一般世帯から出るごみの割合を示しており、量的には生ごみが一番多い。その次に紙・厚紙、ガラス、プラスチックとなっている。
量的に一番多い生ごみの処理が問題となるが、この構成比率が東京都によく似ているところが面白い。
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また(図7)は、EU25カ国とノルウェーの生ごみの回収状況である。
濃いグレーの棒の部分が、分別せずに回収して埋め立てるという処理。白い部分は、分別回収して堆肥化し活用する処理である。一番左はイタリアで、生ごみの量自体が非常に多く、そのほとんどは分別せずに回収して処理している。その隣がドイツで分別回収の割合が非常に高くなっている。
 
EUのなかで、特に、ドイツ、オランダ、オー ストリアなどは分別回収が盛んであるが、フランス、イギリスでは分別回収はあまり行われていない。
ポーランドは分別回収がゼロである。
EU25カ国のなかでも実態は多様だが、概して言うと、生ごみに限らずリサイクルに関しては、ドイツ、オランダも含む北欧は熱心であり、英国も含む南欧は熱心でない傾向がある。

③電池のリサイクル

電池については、これまで一連のリサイクル指令が出されていたが、これらと置き換えられる新電池指令(2006/66/EC)が発効した。これによりカドミウムの使用が国内法の発効とともに禁止される。
つまり、ニッカド電池が原則使えなくなる。ただしコードレス電動工具などに使われているもの等については、例外的に猶予期間が認められている。また(図8)のように、リサイクル率の目標値も定められている。
また、分別回収マークに関するシンボルと仕様も見直された。家庭のごみ箱への投入を禁止し、消費者はスーパーマーケット等に用意・設置された回収ボックス(図8の写真)に、電池を持ってきて投入するようになった。
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④廃電子機器リサイクル
WEEE指令とRoHS指令の両方とも最近実施されたばかりだが、既に規制の見直しが行われ、今年(2007年)末までに改善提案が発表される予定で、今後も目が離せない状況である。

また欧州委員会が発表した108ページにおよぶリポート「EUにおける廃電子機器指令の実行」には、EU25カ国のWEEE指令の各国の現状・実行状況が詳細にリポートされている。